D-day ~ ファンドがユーロ空売り攻勢をかける日
卒論の関係で、アジア通貨危機について調べてみる機会があった。調べれば調べるほど奥が深くて面白いものです。
(追記:アジア通貨危機は、過大評価された通貨に対してヘッジファンドが空売り攻勢を仕掛け、それを受けた政府が固定相場制を維持するだけの通貨を買い支えられず、変動相場制に移行し同時に通貨が信用を失ったことが原因と言われています。)
それに関連して「現在のユーロ高はいつまで続くのか?経済ファンダメンタルズを反映した適切な為替水準はいくらぐらいなのか?」という疑問に僕なりの解を与えるべく、調べてみました。
…けれど途中で正確な推計は無理だと言うことが判明。
理由は単純に、現在に関する経済指標がないせいです。
つまり、過去の分析は出来るものの現在や将来的な予測が難しい。
年次データで見れば、為替の安定的な水準が見えてくる (と思う) のだけれど、この手のデータは必ずタイムラグがあるため、集まって2005年までのデータ。特にEUとしての総合指標は集計に時間がかかるためかデータが出てくるのが遅いので、EUの総合指標のみが一年遅れのケースも目立つ。
そこから1年半以上経っていて、言うまでもなくGDPもインフレ率も変化しているので、現在にどの程度妥当性があるのかは不明です。
あとは、何故か整合性がいまいち…。
データが足りないので別々のソースから拝借する必要があったり、EUとしての指標がないのでEU諸国のデータを加重して全体としての指標を作ったり、重回帰分析をしてみれば何故かR-squaredが1になってしまったり、結果と理論が逆の結論だったり…。
これだけ時間と労力を費やして (といっても数時間だが) 何もしないのもバカらしいので、うpするだけしておくことにしました。
ExchangerRate (xlsファイル)
考え方の基本にしたのは、まず為替レートがPPPに収束するという原則の下にその他の重要指標を考慮して恣意的に調整しましょう、という方針。
エクセルの内容は、各データ、調整して計算したPPPと為替レート、調整方法、PPPの原因を特定するための重回帰分析の4シート。
調整方法では、EUとしての総合指標を出すために、EU諸国のPPPをGDPの比率によって加重して算出。足りないPPPの年次データについては各国のHistorical Dataを単回帰して算出。
PPPに関する重回帰のシートは整合性が取れなくて信頼できる内容か疑問なので無視してください。結果として、経済指標をどうこう言うのも止めました。ご自分で数字を見てご解釈ください。
結果としては、2006年の経済状態から考えると、円と米ドルはほぼ均衡状態、ユーロは円に対して19.0%、米ドルに対して16.0%高い値段で取引されている、という推計結果。
現在のレートは大体ここ一ヶ月くらいの平均値と思われる値を適当に設定。数字を変えることも可能です。ただし、3種類のレートの間で裁定取引が成立しないように注意。("Arbitrage Checker"という数字を限りなく"1"に近づけてください。)
ここで為替相場が固定制であれば、ファンドはユーロの空売り攻勢をしかけてECBのユーロの買い支えを打ち破れた場合に約15%弱程度のリターンを得られることになるでしょう。ユーロが信用を失って通貨危機に陥った場合はもっとですね。
実際は変動相場制なので、相場にかなりの心理的圧力が必要ですが、現在のところは金利差がまだ有効であるとの見方が支配的なので、ファンドが単体で空売り攻勢を仕掛けたところでユーロが急激に値崩れを起こすことはないでしょう。要するに、空売り攻勢のかかる"D-day"はあったとしてもしばらく先であろう、との個人的観測です。
ただ、長期的かつ理論的に考えるならば、将来ユーロは10%程度の値下がり (つまり10%程度の空売りによる投資利益) が見込まれます。
といっても、金利差が埋まってかつ日本の経済指標が相対的に上向いたらの話ですので、3~5年くらいの息の長い投資になるかと。年リターンは3%弱でしょうか。まぁ日本で銀行に預けておくよりいいかもしれませんね。保障はしませんが。
MicrosoftとYahooの合併交渉は成立するのでしょうか…。
コメント
僕は経済のことに全然詳しくないのをいいことに「もし世界に為替レートというものがなく、世界中の通貨がひとつに統一されることになったらどうなるんだろう・・・」と思うことがあります。ちなみにそのときの通貨名はギルかゴールドで・・・(オイオイ、どこの世界だ)
それにしてもさわもちさんは卒論でそのような高度な研究を考えているのですね。しかもフランスに留学しているなんてお若いのに大したものです。
投稿者: スメルジャコフ | May 6, 2007 11:53 PM
> スメルジャコフさん
いや、僕も通貨が統一されたら素敵だなと思います!個人的にはギルが好みですかね(笑)
僕はフランスへ来て、ユーロという仕組みが非常に便利で、運営に大変な努力が払われていて、かつ問題点も山積みだと言うことを知って、為替に興味を持ちました。
ただこれは、大したことない内容を「とても高度そうに」書いているだけなので、そんなそんな…。留学ももうすぐ終わってしまいますし…。来年の今頃何をやっているのか検討すらつかない未熟者でございます…。
投稿者: さわもち | May 8, 2007 01:35 AM