日経新聞の一面に新技術に関する記事が出ていました。
内容は、高炉に新技術を導入すると、CO2排出量が30%削減できるというもの。
高炉といえば、鉄鋼を作る際にとても重要であり経済全体の基幹産業である一方、ガンガン火を焚くのでCO2排出量は大きいでしょう。
さて。この新技術がどれほどのインパクトを持つのかを検証してみました。
設定は以下の通り。
・今すぐに法律で「新しく高炉を建設する際には新技術を利用すること」と決められる
・減価償却を終えた古い高炉は速やかに新しい高炉へと改築される
・高炉が閉鎖になることはなく、経済成長率と同じ速度で高炉が増える
三番目の仮定が重要で、中国など成長著しい国では、一つ一つの排出を削減しても、全体としてはほとんど役にたたないといった場合を考慮に入れることが出来ます。
単純に考えれば、経済が2倍に成長すると (年7%の成長で約10年かかる)、排出量も2倍。
後述しますが、日本のここ16年間の弾力性は約0.25ですので、中国では少なくとも1.3倍と言ったところでしょうか。日本は経済全体に占める3次産業の割合が高いですし。すると30%削減しても100%を超えてしまう、という可能性が出てきます。
結果の例を挙げます。
例えば新技術で30%の削減が可能、経済の年成長率 (正確には排出量の成長率) は8%、減価償却にかかる時間が30年。
すると、25年後の排出量の増加は384% (約4.8倍)となり、全く減る気配がありません。
経済成長とCO2排出量増加の弾力性にも因りますが、弾力性が高いと上記 (弾力性は1) のような結果になり、京都議定書のような「****年の排出量から**%削減」というのは難しいことになります。
先進諸国では経済成長に占める3次産業の貢献度が高いはずなので、弾力性は低くなり、より実現可能性の高い目標である一方、3次産業は本質的に削減が難しいというジレンマを抱えています…。
またある部門での排出量の増減は、経済全体に対するインパクトがどれだけなのかを考慮する必要があります。例え削減に成功しても、他の部門で排出量が増加していれば全体としての減少は見込めません。
どちらにせよ、CO2排出量削減が温暖化防止に必要だとするならば、削減は急務だと言うことですね。特に成長著しい国でなんとか食い止めなくてはいけません。
ちなみに、先ほどテレビでは、2006年度の排出量が発表になり、削減目標となる1990年から6.4%排出量が増加していたという趣旨の内容が報道されていました (参考記事)。一方こちらのデータが正しいとしますと、年成長率が平均で1.3%なので、日本経済は16年間で約23%成長したことになります。つまり日本のここ16年間の経済成長に対する排出量弾力性は約0.25です。ご参考までに。
以下、エクセルの説明です。ご利用したい方はどうぞ。
エクセルファイルはこちら
・青い数字 ... 変更可能な数値。お好みに合わせて設定してください。
・factories ... 現在の工場数。結果には影響を与えませんが、数字を見やすくするためにご利用下さい。
・reduction ... 新技術によるCO2排出削減量
・depreciation ... 減価償却にかかる時間
・growth rate ... 経済成長率。経済成長率を低く見積もると、経済成長に対するCO2排出量増加の弾力性が低い状態と捉えることも出来ます。
・emission increase ... 排出量。
・n of factory increase ... 高炉の数。
・nominal reduction ... 新技術が導入されなかった場合と比較した削減率。当然ながら年を経るごとに数値が上昇し、最大値はreductionで設定した数字になります。